カメラマン小林正英氏から、ステディカムを運用したレポートをいただきました!全3回に分けてご紹介いたします。
最終回はNHK 4K「にっぽん百名山・鹿島槍ヶ岳」の撮影事例です。
NHKのBSプレミアムで「にっぽん百名山・鹿島槍ヶ岳」の放送が始まり5年が経ちました。
当初は「世界ふれあい街歩き」を山で出来ないか?という制作側からのオーダーでしたが、Archerクラスのステディを担ぎながらの登山は難しいということで、軽量クラスのステディをいくつか試し、カメラはSONYのHVR-Z5JとステディカムPilotという組み合わせに決定しました。
今年度からは4K対応という条件が付いたので、カメラがほぼ同じ重量で、なおかつ全く同じ画かくで撮影出来るSONYのPXW-Z100を選択したが、ワイヤレス受信機を取り付けても理想的なバランスでオペレート出来ましたし、好感触でした。
百名山の場合、世界ふれあい街歩きのように全てがステディ映像というわけではありません。
番組の二割くらいは、三脚付きで風景やお花の画を撮影していきます。
山の中では、安定した電源の供給が難しく収録メディアの現場取り込みにはリスクがあるため、予算的に高価な収録メディアのS×Sを大量に持っていくことを断念せざるをえませんでした。
結局、Z100と同じXQDカード収録が可能なSONYのFS7を併用することにしましたが、日々4Kカメラの需要が増す中、状況も変化し続けていますので、その都度撮影体制を見直す必要もあるかと考えています。
いずれにせよ、4K8Kなどこれからの高画質時代でもステディカムは違和感無く対応していける機材ですから、積極的に活用する価値があると思います。
過去、甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根や、谷川岳の西黒尾根など、急登をいくつも登りましたが、傾斜角度によりステディカムの限界を超えることはありませんでした。
今回の鹿島槍ヶ岳では、そこまでの急登は無く、終始快適に撮り進められましたし、出演者であるガイドさんの周囲を回りながら、その背景にある周りの山々をワンカットで360度見せたりとステディカムならではのダイナミックな映像を残せました。
世界ふれあい街歩きとの決定的な違いは、カメラの前を山を案内するガイドさんが歩いているという点です。
山道は、街に比べて道幅も狭いため、前を歩くガイドさんで景色を隠してしまわないように、時にはガイドさんとの距離をかなり離して撮影します。
ガイドさんとの微妙な距離感を押し引きする際にストレス無くスムーズに行えるのがステディカムの長所です。
僕がステディカムを駆使して登った山は日本国内だけでまだ30山程度に過ぎません。
今後は雪山や海外の山などでもステディカムを活用出来る機会があれば面白いかもしれませんね。
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「にっぽん百名山」
NHK-BSプレミアム
毎週月曜日 19:30~20:00
[再放送]
翌週月曜日 6:30~7:00
鹿島槍ヶ岳の回は2017年10月9日OA済
再放送の発表はNHKホームページ内で。
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小林氏の他の運用事例もぜひご覧ください。
Steadicam Zephyr運用事例/小林正英氏-1-
Steadicam Archer2運用事例/小林正英氏-2-
<プロフィール>
小林 正英
日本映画学校卒業後、映画、CM、テレビ撮影に携わり、現在フリーランスのカメラマンである。
NHKの「美の壺」や「英雄たちの選択」などの担当機会が多い。
現在、NHK 4Kドキュメンタリー「蘇る太陽の塔」制作中(2018年3月放送予定)